個人事業主 数字・雑学ガイド

個人事業主の為の数字・ニュース紹介サイトです。

フリーランスと個人事業主の違いって何?働き方から税金・社会保険まで徹底比較

目次

1. フリーランスと個人事業主の基本的な定義

日本では フリーランス という言葉は 働き方・スタイル を指す慣用表現であり、個人事業主 は 税務上の区分 を指す法的な用語です。
そのため、フリーランス=個人事業主 という関係性になるケースがほとんどですが、次のような違いがあります。

項目フリーランス個人事業主
定義企業や組織と雇用契約を結ばず、
案件ごとに業務委託などで仕事を受ける形態
税務署へ開業届を提出し、
所得税などを 事業所得 として申告する個人
届出義務特になし(職種によっては各種許可が必要)原則として 開業届(+青色申告承認申請書)を提出
屋号設定自由(任意)開業届により正式な 屋号 として登録可能
名刺・肩書き肩書きは自由に名乗れる(例:Webデザイナー)「屋号+代表○○」など行政文書でも使用可

2. 働き方の違い

2‑1. 契約形態

フリーランスは 業務委託契約 や 請負契約 が中心で、時間より成果 に対して報酬が支払われます。一方、個人事業主として登録していても、家業的に自分の店を構える など、成果だけでなくサービス提供時間が重視されることもあります。

2‑2. 取引先との関係

フリーランスは専門スキルを複数社に提供するケースが多く、営業活動も自身で行います。個人事業主は BtoC の小売・飲食や BtoB の請負業など形態が多様で、事業用資産(店舗・設備など)を保有しやすい点が特徴です。

2‑3. 収入の変動

どちらも 固定給 はありませんが、フリーランスは案件単価×稼働日数 により月ごとの変動が大きい傾向があります。個人事業主でも店舗型ビジネスの場合は固定売上(リピーター)があるなど、収入の安定性が職種で大きく変わります。

3. 開業手続き・届出の違い

フリーランスとして活動を始めるだけなら行政手続きは不要ですが、税務上は個人事業主として開業届を提出 することで青色申告などの優遇を受けられます。

3‑1. 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)

  • 提出期限:開業から 1か月以内(遅れても罰則はないが提出推奨)
  • 提出先:所轄税務署
  • メリット:屋号を正式登録できる/青色申告が可能になる

3‑2. 青色申告承認申請書

最大65万円の所得控除や赤字3年繰越など節税効果が大きいので、事業所得が見込めるなら提出必須です。

3‑3. 各種許認可

飲食店営業許可や古物商許可など、業種によっては別途行政許可が必要 になります。フリーランスの デザイナー・ライター などでは不要です。

4. 税金の違い

4‑1. 所得税

フリーランス・個人事業主いずれも 累進課税 の 所得税 を自己申告(確定申告)します。事業所得・雑所得の区分や青色申告の可否で控除額が異なる点に注意しましょう。

4‑2. 消費税(インボイス制度対応)

課税売上が 1,000万円超 となる2年後から消費税課税事業者 となります。2023年10月からは インボイス制度 が開始し、BtoB取引では 適格請求書発行事業者 登録の有無が取引条件となりやすいです。

4‑3. 事業税・住民税

個人事業主(事業所得)が対象で、事業税 は 所得税とは別 に課税されます(業種ごとに税率あり、年290万円以下の所得は免税)。
一方 雑所得扱いのフリーランス になると原則課税されませんが、節税メリットも失われます。

5. 社会保険の違い

5‑1. 健康保険

雇用保険に加入しないため、原則 国民健康保険 に加入します。所得が増えると保険料も比例して増す点は共通です。

5‑2. 年金

厚生年金ではなく 国民年金(第1号被保険者) が基本。
将来受取額を増やすには 付加年金 や iDeCo(個人型確定拠出年金) を活用する方法があります。

5‑3. 労災保険・雇用保険

原則任意加入となりますが、一定条件下で 特定加入 が可能です。
デザイナーやITエンジニア向けの フリーランス協会の保険 など、民間サービスを検討するのも一案です。

6. メリット・デメリット比較表

観点フリーランス個人事業主
自由度◎ 案件選択・働く場所が自由○ 自由だが事業運営に制約(設備や店舗)
信用力△ 屋号なし・確定申告のみでは融資審査が厳しい○ 青色申告+屋号でビジネス実態を示しやすい
節税余地○ 経費計上は可能/青色申告すれば控除拡大◎ 個人事業税・青色申告・専従者給与など選択肢が広い
社会保険△ 国民健康保険+国民年金(所得比例で負担増)同左(実質差なし)
将来的な法人化○ 売上増でもスピーディーに法人化を検討可能◎ 事業基盤があるため法人化メリットを得やすい

7. どちらを選ぶべき?判断のポイント

  • スキル提供型(IT・クリエイティブなど) → まずはフリーランス+開業届で様子見
  • 店舗型・仕入れを伴う事業 → 最初から個人事業主として事業所得申告がスムーズ
  • 売上 年間1,000万円 が見えたら 法人化 の検討タイミング
  • 融資が必要・屋号での取引が増える → 個人事業主化で信用力アップ

8. まとめ

フリーランスと個人事業主はしばしば同義で語られますが、法律・税金・社会保険 の観点では明確に区別されます。
まずは自分のビジネスモデルと将来の規模感を整理し、最適な形でスタートしましょう。2025年4月時点の制度に基づき解説しましたが、法改正に備えて最新情報を必ず確認してください。